2011年11月29日火曜日

インゼミ(三橋編)~インゼミから得られる新たな視座~

お久しぶりです。串田です

前回の本ゼミで新たに、製作委員会(※1)に連ねる企業のネットワークを組み込むという助言を頂いたのですが、インゼミの発表は今までしていたコンテンツ変換をしっかりした形のものにして発表を行うことに決まりました。
その後、本ゼミのアドバイスを参考にネットワークのデータベースを構築する作業を行いながら、私たちは慶応大学商学部の三橋平ゼミとのインゼミの準備を進めていました。

三橋ゼミとのインゼミは毎年恒例のイベントです。三橋ゼミと井上ゼミは、主たる研究手法が対照的です。井上ゼミでは、足を使ったフィールドワークを用いて研究課題を見つけたり仮説を検証したりします。一方で三橋ゼミでは、学会で蓄積されている理論への貢献を主眼に置いて、主に数値を用いた実証研究を行っています。簡単に言うと、三橋ゼミは「定量的アプローチ」、井上ゼミは「定性的アプローチ」を用いて研究を行います。

毎年、インゼミの開催場所は交互に行われますが、今年は慶応大学の三田キャンパスでの発表になりました。
また、いつもは互いのゼミから発表班が発表し、その研究結果に対して全体でフィードバックを行うという形式でしたが、今回はお互いの研究“報告”を行い、今後の研究への“アドバイス”という形でした。

私たちはこのインゼミで研究報告をさせてもらい、その後、三橋ゼミから普段、定量研究を専門にしているゼミならではの視点から、研究内容にかんしてたくさんの指摘を頂くことができました。特に、コントロール変数にかんしてはたくさんのアドバイスを頂きました。(コントロール変数:回帰分析で、直接興味はないが、従属変数に影響を与えてしまうような、独立変数のことを指します。たとえば、「気温」が「ソフトクリームの売上」に与える影響を調べたいとします。このとき、「ソフトクリームの売上」を左右するような要因としては、他にも「美味しさ」や「価格」なども考えられますよね?この「美味しさ」や「価格」のような要因のことを、コントロール変数と呼びます。コントロール変数を、回帰モデルに入れることで、直接興味のある説明変数の純粋な影響を調べることができます。)

例えば、TVなどで特別番組を組んで映画の宣伝をしていますが、この広告効果は映画の興行収益に大きく影響します。コンテンツ変換の影響がどれくらい興行収益に影響を与えるのかを正確に、測定するためにも広告効果を数字に落として制御しなければなりません。
しかし、このような広告効果を数字に落とし込むには、特別番組の回数だったり、広告製作費だったりとデータの取得可能性がとても難しいものばかりです。

それでも、三橋ゼミの方々から
製作委員会のメンバーに在京TV局がいれば「1」と、ダミー変数をおいて広告効果を代替する変数設定の案が出てきました。彼らは、定量研究を普段から行っているのでデータが取得できなくても、代替となる値をすぐに考え付くことができるのです。このように変数の値を柔軟に代替して設定できるとことは、定量研究ではとても重要であり、今回のインゼミから学べたことです。
(※1:映画を作る際、TV局や出版社、広告代理店などが2次利用の権利を得る代わりに、出資金を与える制度)



発表終了後の慶応大学からは、東京タワーがキレイに見えました。


来週は、法政大学とのインゼミがあるのですが
また新たな視座が得られるのではないかと、今からワクワクしています。

それでは
串田

2011年11月15日火曜日

コンテンツ変換とネットワーク

引き続き、湯尾が綴ります。

本日は本ゼミでの経過報告に臨みました。
しかし、今回は自分たちの中でもしっくりせずに発表することになりました。順調に分析と安藤先生へのフィールドワークを重ねた一方で、コンテンツ変換を“4つのタイプ(数の多い/少ない・原作からの時間が長い/短い)に分けてそれぞれの売れる法則を見つるといった課題を克服できずにこの日を迎えることになったからです。

コンテンツ変換を4つに類型化するためには、いわゆる漏れがなく、ダブりのない切り口が求められますが、そんなにきれいに上手くいかないのが現状でした。

結果中途半端な形のものを発表することになり、本ゼミの場のみんなも「きょとん」としていました。

さぁ、参った。どうしたものか。これが私たちの心の声でした。

そんなとき、「映画班は去年ネットワーク分析してたよね?」と先生が仰いました。
「それを絡めて論じることができるのではないだろうか。」と、きっかけを与えてくださいました。

ネットワーク分析とは、簡単にいうと組織同士や人々の関係性が、自分の行動や結果にどのような影響を及ぼすのかという研究です。
例えば、授業に毎回出ているのに、全然出ていないクラスメイトのほうが成績が高かったなんてこと、大学生の方なら経験があると思います。これをネットワークで説明すると、クラスメイトは自分より友達と仲がいいので、ノートを借りることができたり、テストに関する情報をもらえたりするので、成績がよくなるというわけです。

このネットワーク分析の視点で、昨年は映画産業に携わる映画会社の関係性を、分析したデータが残っていました。そのことを先生は思い出させてくれました。

そして、このネットワークの視点を絡めて、コンテンツ変換の研究を続けるならば、
「原作を活かす、企業ネットワークがあるのではないか」というリサーチクエスチョンが。たつわけです。

暗闇に光が照らされた気がしました。
これでまた新たに研究を進めていくことができそうです。

2011年11月3日木曜日

安藤先生インタビュー

皆さんいかがお過ごしでしょうか。湯尾です。

前回の先生との相談で、実務者の方にインタビューを行う必要があるとアドバイスを頂き、本日、井上ゼミでの大切な研究方法であるフィールドワークを行ってきました。
フィールドワークの大切さは、ゼミ生皆感じていますが、それはなぜか。

研究においては、「現象」と「理論」の結び付きがいかに整合性が取れているかが、非常に重要になってきます。実際に現実で起きている不思議な事象を、適切なレンズで覗き込む。これができていないと、研究が上手く進んでいきません。よって、井上ゼミでは、現場での声と理論との距離を縮める一環として、フィールドワークを重んじているのです。

その際、現場が持っている感覚や仕事の仕方などを、研究する側である私たちも、引き出しに仕入れていくこと、つまり知識のレベルを揃えること(専門家並みの知識量になるには生半可な努力が必要ですが…)が肝心になります。そのため、前回私たちはキネマ旬報をもう一度読み漁ったわけです。

さて、私たちは理論と現象の結びつきを確認するためにインタビューをお願いしました。
その相手は、安藤紘平先生。

早稲田大学は映画に関する授業が豊富で、その内容も充実。マスターズ・オブ・シネマやプロデューサー特論などを担当しているのが安藤先生です。

安藤先生はトノンレバン国際映画祭で短編部門グランプリなど数多く映画賞を獲得されています。そしてパリ、ニューヨーク、ロンドン、東京などの美術館に先生の作品が収められていて、2001年、2005年にはパリで安藤先生の回顧展が開催されています。ハイビジョンを使っての作品制作では世界的な先駆者で、ハイビジョン撮影を35mm フィルムに変換、「アインシュタインは黄昏の向こうからやってくる」(1994)、「フェルメールの囁き」(1998) などの多数の作品で、ハワイ国際映画祭銀賞、スイス・モントルー国際映像祭アストロラビウム賞、ハイヴィジョンアウォード・グランプリ、マルチメディア・グランプリなどを獲得しておられます。

その先生にインタビューをお願いしたのは、約1週間前。
授業を取っていた私たちは、授業後に突撃でお願いに行きました!

その際、心がけたのは
①  私たちが誰で
②  どのようなことをしていて
③  なぜお願いするにいたったかといった
3点を意識した内容のお手紙と昨年映画産業を対象にして執筆した論文を両手にぶら下げ、意気込んで頼みに行きました。
(これは、インタビューを申し込むときには絶対に意識しなければならないことです。
これらを行うことで、インタビューの可能性がぐっと近づきます。)

多忙な先生のため、断られる可能性の方が高いのではないかと踏んでいたのですが
意外にも先生は快く引き受けてくださいました。

そんな経緯があり、今日に至ったわけですが、
インタビュー中は、先生が多くのことを語ってくれて、その分多くの気づきを得ることに成功しました。
前回は、コンテンツ変換を4タイプに分け、その中でも、コンテンツの変換数が多く、原作からの時間が長い作品が、最も高い興業収益を挙げることを発見しました。私たちは、分析結果を安藤先生に見て頂き、その理由をお伺いしました。
「原作を映画化したいという申し込みは断られる場合がある。たとえば、マンガを映画化するとき、マンガが連載途中なのでと断られる場合がある。それは、映画が物語を完結させるメディアだという認識があり、原作者がその決着の仕方をまだ決めていないからである。また、連載途中や放映途中に映画化をして、その映画がコケてしまった場合、連載・放映途中の作品に傷がついてしまうのを避けたいからである。」とお答えいただきました。
つまり、元の素材のコンテンツがいいほど、映画化によってストーリー構成に影響を与えたくないと元の素材の制作者は考えます。そのため、ストーリーの途中で、中途半端に映画化に動かないため、結果として、原作からの時間が長くなる、ということでした。
インタビューなどのフィールドワークの良い点は、私達が抱いている疑問に遠回りせずに答えてくれるところです。たとえば、書籍や雑誌、論文などを読んでいて疑問を持つことがあります。その答えを探すのに、また文献をあさるのも一つの手段ですが、その答えがそこにはないことがあります。
しかし、専門家やその道のプロなどへのインタビューは、そのような遠回りをせずに直接答えを得ることが可能となります。実際、安藤先生のインタビューから得られた情報は私達の問題意識から発信される疑問にダイレクトに答える内容でした。
このように、直接質問をしたこと以外にも、安藤先生は多くのことを教えて下さいました。
エジソンから始まる映画ビジネスの起源から、映画のストーリーの黄金律。そして、私たちが注目している映画で使用される「原作」が使われるようになった背景、それらが果たしている機能などです。
インタビュー中は、安藤先生の圧倒的な知識量に、ただただ感動しておりました。

せっかく安藤先生から頂いた膨大な情報を無駄にしないよう、これから研究に生かしていきたいと思います!
では、今日はこの辺で。
湯尾