2011年11月3日木曜日

安藤先生インタビュー

皆さんいかがお過ごしでしょうか。湯尾です。

前回の先生との相談で、実務者の方にインタビューを行う必要があるとアドバイスを頂き、本日、井上ゼミでの大切な研究方法であるフィールドワークを行ってきました。
フィールドワークの大切さは、ゼミ生皆感じていますが、それはなぜか。

研究においては、「現象」と「理論」の結び付きがいかに整合性が取れているかが、非常に重要になってきます。実際に現実で起きている不思議な事象を、適切なレンズで覗き込む。これができていないと、研究が上手く進んでいきません。よって、井上ゼミでは、現場での声と理論との距離を縮める一環として、フィールドワークを重んじているのです。

その際、現場が持っている感覚や仕事の仕方などを、研究する側である私たちも、引き出しに仕入れていくこと、つまり知識のレベルを揃えること(専門家並みの知識量になるには生半可な努力が必要ですが…)が肝心になります。そのため、前回私たちはキネマ旬報をもう一度読み漁ったわけです。

さて、私たちは理論と現象の結びつきを確認するためにインタビューをお願いしました。
その相手は、安藤紘平先生。

早稲田大学は映画に関する授業が豊富で、その内容も充実。マスターズ・オブ・シネマやプロデューサー特論などを担当しているのが安藤先生です。

安藤先生はトノンレバン国際映画祭で短編部門グランプリなど数多く映画賞を獲得されています。そしてパリ、ニューヨーク、ロンドン、東京などの美術館に先生の作品が収められていて、2001年、2005年にはパリで安藤先生の回顧展が開催されています。ハイビジョンを使っての作品制作では世界的な先駆者で、ハイビジョン撮影を35mm フィルムに変換、「アインシュタインは黄昏の向こうからやってくる」(1994)、「フェルメールの囁き」(1998) などの多数の作品で、ハワイ国際映画祭銀賞、スイス・モントルー国際映像祭アストロラビウム賞、ハイヴィジョンアウォード・グランプリ、マルチメディア・グランプリなどを獲得しておられます。

その先生にインタビューをお願いしたのは、約1週間前。
授業を取っていた私たちは、授業後に突撃でお願いに行きました!

その際、心がけたのは
①  私たちが誰で
②  どのようなことをしていて
③  なぜお願いするにいたったかといった
3点を意識した内容のお手紙と昨年映画産業を対象にして執筆した論文を両手にぶら下げ、意気込んで頼みに行きました。
(これは、インタビューを申し込むときには絶対に意識しなければならないことです。
これらを行うことで、インタビューの可能性がぐっと近づきます。)

多忙な先生のため、断られる可能性の方が高いのではないかと踏んでいたのですが
意外にも先生は快く引き受けてくださいました。

そんな経緯があり、今日に至ったわけですが、
インタビュー中は、先生が多くのことを語ってくれて、その分多くの気づきを得ることに成功しました。
前回は、コンテンツ変換を4タイプに分け、その中でも、コンテンツの変換数が多く、原作からの時間が長い作品が、最も高い興業収益を挙げることを発見しました。私たちは、分析結果を安藤先生に見て頂き、その理由をお伺いしました。
「原作を映画化したいという申し込みは断られる場合がある。たとえば、マンガを映画化するとき、マンガが連載途中なのでと断られる場合がある。それは、映画が物語を完結させるメディアだという認識があり、原作者がその決着の仕方をまだ決めていないからである。また、連載途中や放映途中に映画化をして、その映画がコケてしまった場合、連載・放映途中の作品に傷がついてしまうのを避けたいからである。」とお答えいただきました。
つまり、元の素材のコンテンツがいいほど、映画化によってストーリー構成に影響を与えたくないと元の素材の制作者は考えます。そのため、ストーリーの途中で、中途半端に映画化に動かないため、結果として、原作からの時間が長くなる、ということでした。
インタビューなどのフィールドワークの良い点は、私達が抱いている疑問に遠回りせずに答えてくれるところです。たとえば、書籍や雑誌、論文などを読んでいて疑問を持つことがあります。その答えを探すのに、また文献をあさるのも一つの手段ですが、その答えがそこにはないことがあります。
しかし、専門家やその道のプロなどへのインタビューは、そのような遠回りをせずに直接答えを得ることが可能となります。実際、安藤先生のインタビューから得られた情報は私達の問題意識から発信される疑問にダイレクトに答える内容でした。
このように、直接質問をしたこと以外にも、安藤先生は多くのことを教えて下さいました。
エジソンから始まる映画ビジネスの起源から、映画のストーリーの黄金律。そして、私たちが注目している映画で使用される「原作」が使われるようになった背景、それらが果たしている機能などです。
インタビュー中は、安藤先生の圧倒的な知識量に、ただただ感動しておりました。

せっかく安藤先生から頂いた膨大な情報を無駄にしないよう、これから研究に生かしていきたいと思います!
では、今日はこの辺で。
湯尾

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