2011年12月28日水曜日

変数の妥当性とは?

新年まで、もうあと3日ですね。どうも、串田です。

地元の神社や商店街では、年越し準備に取り掛かっている光景をよく見ます。この光景を目の当たりにすると、一年を振り返ります。でも、思い返される光景は、ゼミばかり。夏合宿に、インゼミに、冬合宿。これだけ、一年を振り返ってゼミばかりというのは、一生懸命ゼミに取り組んだのだと、今頃になって実感する今日この頃です。

冬合宿が終わってから映画の制作者やアカデミー賞などデータを集めるのと同時並行で、冬合宿前までに立てた仮説の分析を行っていました。
仮説1:流行物が原作の場合、製作者ネットワークが閉鎖的だと、興行収益が高まる
仮説2:過去の名作が原作の場合、製作者ネットワークが開放的だと、興行収益が高まる。

しかし 、思ったような分析結果は出ませんでした。重回帰分析の結果、原作に有意性がないと出たり、モデル内の変数間にいくつもの重なりがでたりしました。そこで、私たちは制作者のネットワークだけに焦点を絞って、新たに分析を行っていました。

分析結果はというと、なんとか出すことが出来ました。分析結果から、創造性(興行収益・芸術得点)をあげるには、以下の2通りの方法があるということがわかりました。

1,プロデューサーが監督と弱い紐帯を持つこと。
弱い紐帯とは、ネットワーク論における主要な概念の一つで、つながりの浅い人からのほうが、自分が知らない新しい情報を手に入れられるという考え方です。

ここから、弱い紐帯をもつプロデューサーは、企画志向であり、新規性の高い情報を手に入れることができるため、高い創造性を発揮できるのだと、私たちは考えました。

2,プロデューサーが監督と強い紐帯を持つ、かつ、他の製作スタッフと密な関係を構築すること。
強い紐帯も、ネットワーク論における主要な概念の一つで、つながりの深い人とは、信頼関係が構築されており、暗黙知の共有がなされるという考え方です。さらに、密度が濃いネットワークは、閉鎖性が高いネットワークとも言いかえられ、そのネットワークの中では、お互いの信頼が深まり、暗黙知の共有が進むとされています。

ここから、強い紐帯をもつプロデューサーは、信頼志向であり、監督やスタッフとの価値観や世界観の共有がなされているため、高い創造性が発揮できるのだと、私たちは考えました。

分析結果を終え、「これで終わりだー!新年は、平穏無事に迎えられる」と意気揚々と先生の研究室へ相談に行きました。

しかし、「この変数のつくり方じゃあとらえきれてない」。

自信を持って臨んだこの分析の結果も無残にも散っていきました。
私たちはここにきて、変数をいかに正確に設定するのかという難しさに直面しました。本来であれば、先行研究を参考にして、変数を作っていきます。しかしながら、今回の分析にかんしてはあまり先行研究がみつからず、自分たちで変数を設定しなければなりませんでした。
ネットワークデータを観測範囲の初年度から、当該年度までの累積データで作っていたのです。

例えば、
2000年までのプロデューサーの累積成績は、1990~1999年までの累積ネットワークデータ、
2001年までのプロデューサーの累積成績は、1990~2000年の累積ネットワークデータ
で説明するというように、
後の年度になるにつれて、ネットワークデータの量が増えていくという形です。

これには問題点があります。
「現在のネットワークデータが、過去の成績を説明することになる」という問題です。私たちは、キャリア連帯の成果を、そのプロデューサーがこれまで製作に関わった映画の興行収益の累積平均であるとしていました。
例えば、これまでに製作に関わった映画の興行収益が5億、10億、15億であれば、
51015/3=10です。

当該年に関わった映画だけでなく、当該年以前に関わった映画の結果も含まれています。
その累積平均興行収益を、現在までの累積ネットワークで説明するということは、間接的に、現在のネットワークの値が、過去の興行収益を説明するということになります。それでは、因果関係が逆になってしまいますよね。

この「累積の問題点」のフィードバックをいただき、わたしたちは、もう一度データベースを作りなおすことに決めました。とても大変ですが、弱音はいている暇はありません。年越しはメンバーで合宿を行うので、ここで挽回したいと思います。

それでは。
串田
 

2011年12月15日木曜日

データ制作奮闘記~効率のよいデータ収集とは~


こんにちは。串田です。
学校に通う電車のなかで「クリスマスどうする?大晦日は?」なんて会話を、耳に挟んで、もう年の瀬なんだなぁと実感している毎日です。

私はというと、冬合宿が終わってから膨大なデータを打ち込んでいました。というのも、前回の記事でもお話しましたが、映画班は冬合宿前に、大きな路線変更があったからです。
それは、「企業」ネットワークではなく、「人」ネットワーク、つまり原作を活かすような製作者ネットワークがあるのではないかという方向性です。

しかし、私たちはまだ制作者のデータが未入力であるという大きな問題があります。そこで、冬合宿が終わってから、各自、大量のデータ打ち込みに没頭していました。

私の担当は以下の3つでした。
①プロデューサーのネットワークを製作するために3000本の映画の制作者データ
②興行収益に影響を及ぼすであろうものとして出演俳優や監督の実力を測定するために、日本アカデミー賞やブルーリボン賞などから監督賞や主演俳優などの賞
③原作そのもの良さも興行収益に関係するのではないかと考え、マンガやドラマ、小説にかんする賞

あまりの膨大な量に最初は先が見えなくて不安でした。しかし、幸いにもネットでデータを見つけることができたので、データ収集を思ったより早く片付けることができました。
本来なら、学校の図書館や国会図書館に行き、データを手作業で打ち込まなければならなかったので、助かりました。
データがネットにある場合は、それを有効活用するに限ります。なにせ、コピーをして貼り付けるだけなので、作業効率が何倍も違いますからね。



私の所感では、研究に打ち込んでいると、何か足りないデータがあったら図書館っていう発想になりがちなので、こういったデータ収集の際は、ネットを有効に使い、作業を効率化させることは、時間が限られている研究では、とても重要になってくると思います。

なので、もし、データを打ち込む際は、まずネットにデータがあるかどうか確認することをお勧めします。

今後は、このデータ収集が報われることを祈りながら、仮説を分析するために収集したデータを整理して、年末に向けて頑張りたいと思います。

それでは。
串田

2011年12月12日月曜日

冬合宿 ~研究の方向転換~

こんにちは
平野です。

とうとう冬合宿!
映画班は、三橋ゼミとのインゼミで頂いたアドバイス(コントロール変数など)を参考にし、冬合宿に向けて、分析を繰り返してきました!

しかし、求めていたような結果は出ませんでした。冬合宿までに行った分析とは、インゼミ前の本ゼミで頂いたアドバイスをもとに構築した「原作を活かす、企業ネットワークがあるのではないか」というリサーチクエスチョンです。このリサーチクエスチョンのもと、原作と興行収益の関係に、交互作用項として製作委員会に所属する「企業のネットワーク」を入れて回帰分析を行いました。
回帰分析とは、例えば「気温が高くなればなるほど、アイスクリームの売上が高くなる」のような、変数間の関係を明らかにするための分析です。
(「回帰分析」についての詳しい説明は、アイスクリーム統計学を参照! http://kogolab.chillout.jp/elearn/icecream/index.html
(「交互作用」とについては、ハンバーガーの統計学の第7章を参照!http://kogolab.chillout.jp/elearn/hamburger/chap7/sec0.html

具体的には、以下の大きく4つのモデルをつくり、回帰分析 を行いました。
1,原作→興行収益
2,ネットワーク→興行収益
3,原作+ネットワーク→興行収益
4,原作×ネットワーク→興行収益 (交互作用)

モデル1,2,3では、原作とネットワークがそれぞれ独立して、興行収益に与える影響を確認しています。対して、モデル4では、原作とネットワークの交互作用があるかどうか、ある場合はその度合いを確認しています。

分析結果は、交互作用項に有意がついたモデルであっても、変数間に多重共線性が出てしまうというものでした。(「多重共線性」とは、変数間に強い相関があることで、分析結果の信頼性が低い状態のことを指します。簡単に言い換えると、多重共線性が出ている分析結果は、正しくない可能性が高いということです。)
つまり、企業のネットワークを交互作用項として入れた分析では、思わしい結果がでなかったということです。

分析結果がでない以上、企業のネットワークを軸に、研究を続けていくことはできません。
よって、私達はネットワークを測る対象を、「企業」から「製作スタッフ」へと変更しました。

スタッフが興行収益に影響を及ぼす要因は、ノウハウや価値観の共有です。閉鎖的なネットワークに位置し、これまでに何度も協働を重ねていれば、監督の価値観を共有する事ができ、必要な技術ノウハウも獲得することができます。よって、スピーディーかつ監督の思い通りに、映画が作れると考えました。逆に、開放的なネットワークに位置し、他の様々なスタッフと協働を重ねることで、新しい知識や情報を得ることができます。よって、他の映画よりも新規性が高く、ユニークな作品ができるのではないかと考えました。

また、製作スタッフのデータを入手できたことが、変更を決意した理由の一つです。定量研究をするにあたり、最も重要な条件の1つとして、データが入手できることがあげられます。いくらおもしろいリサーチクエスチョンを立てたとしても、それを実証するためのデータがなければ、元も子もありませんよね。

私たちは、映画名、ジャンル、製作スタッフの一覧が掲載されている、WEBサイトを見つけました。キネマ旬報データベースという、キネマ旬報社が提供しているWEBサイトです。(http://www.kinejun.jp/
キネマ旬報社は、1919年から映画雑誌を発刊している、いわば映画業界の大御所で、信頼できるデータベースだと言えます。キネマ旬報データベースの製作スタッフのデータを元に、私たちは映画製作スタッフのデータベースを構築しました。

そして、原作の特性とネットワーク特性をあわせて、仮説を導出しました。

仮説1
流行物が原作の場合、製作者ネットワークが閉鎖的だと、興行収益が高まる

流行物は、流行を逃さないように通常よりも短期間で製作しなければなりません。
その際、製作スタッフのネットワークが閉鎖的であれば、お互いを信頼しているとともに、価値観の共有が進んでいるので、流行物をスピーディーに映画化することができると考えました。

仮説2
過去の名作が原作の場合、製作者ネットワークが開放的だと、興行収益が高まる。

過去の名作が作られたときと映画化するときでは、時代背景が違います。
過去のままではなく、現代のコンテクストを吹き込んだアイディアを付与することで、
原作の良さを維持しながら、現代の観客にも受け入れやすい作品を作る必要があります。その際、製作スタッフが、開放的なネットワークに位置していた際には、新しい知識やアイディアを得る可能性が高いため、過去の名作を現代の文脈に沿った映画化に成功することができると考えました。

製作スタッフの分析は、冬合宿までにすることが出来なかったため、リサーチデザインのみの発表となりました。

フィードバックでは、
「もっと様々な切り口で、原作の分類ができるのではないか」
という指摘をいただきました。これまで、原作を「コンテンツ変換数」と「コンテンツ変換種類」「コンテンツ変換時間」の3種類で分けていました。しかし、これだけにとらわれる必要はありません!私たちは、「文字媒体か映像媒体か」、「人気作品か否か」、「ジャンル」、「監督主導かプロデューサー主導か」など、様々なアイディアを出し、今後の分析における変数を作成していくことになりました。

もちろん、製作スタッフのデータベースをしっかり整理して、ネットワークの値を出すことが前提です。冬合宿が終わり次第、すぐにデータベースを構築しなければなりません。
忙しいですが、頑張っていきたいと思います

それでは
平野

2011年12月2日金曜日

インゼミ②(稲垣ゼミ編)

またまた湯尾がお送り致します。

今日は前回の慶応大学三橋ゼミに続き、今年度2度目の対外ゼミ発表、
法政大学稲垣ゼミの皆さまとのインターゼミ、通称インゼミです。

昨年に引き続き二回目の交流ということで
お互い成長した姿を見せられたらと思い、臨みました。

まずは、相手の発表です。
今回は2班発表して下さいました。

ひとつめは、TOTOの事例を通して、
いかにウォッシュレットトイレットを海外、特に中国に根付かせていったかを
紹介して下さいました。

もうひとつは、昨今日本が力を入れている観光業を対象にして、
いかに人々を呼び寄せるかを、福岡の成功しているケースなどを紹介しながら、
研究発表してくださいました。

双方の発表に共通しているのは、国際的な視点から研究を行っていて、グローバル化の必要性があると言われている日本で、それ自体非常に価値ある内容だと思った点です。

また細かいところでは、情報の“量”が適切だったと感じたところ。情報量が無駄に多くなく、それでいて不足もしていないと感じました。

総じて、井上ゼミ生は学びのある研究発表を聞けたのではと個人的には思います。

次に、私達の発表です。

実は、前回の三橋ゼミとのインゼミから、スライド構成をほぼ一新しました。もう少し、いわゆる「パフォーマンス」を意図したスライド構成になっており、“掴み”や“落ち”などの引き付ける発表を意識しながら、作成しました。

その過程の中で井上ゼミでは、発表班ではない多くの仲間が支えてくれます。

自分らの研究を進めていく事も大変なのにも関わらず、私達に時間を割いて発表内容にフィードバックしてくれました。
「スライドの構成がわかりづらい」
「プレゼン中の目線は皆を向いた方がいい」
などなど。

それも一回練習とかではなく、一週間の半分ぐらい掛けて。
しかも「午前中に用事があるから午後に見るよ」と言ってくれる仲間もいて、
合計して、8~9回練習に付き合ってくれました。

ときにやさしく、ときにきびしく接してくれるのが、私達の同期です。

こうして試行錯誤の日々を送りながら、あっという間に発表する日になりました。

拙い話者なので、本当に通じたか通じなかったかはわかりませんが、多くの稲垣ゼミ生の方が質問やコメントを下さった点を鑑みると、少しは伝えられたのではないかと。

ここで、インゼミを通して感じたことをまとめます。インゼミを行うことの素晴らしさのひとつに、自分たちを客観的に見ることができる機会になるということがあります。

研究を進めていく中で、その推進単位は総じて同質化していく傾向にあると思います。
それは、多くの時間を共有する中で、お互いの好きなものが似てきたり、口癖が似てきたり、ひいては価値観すら似てきたりするときを感じます。

それは意思決定を早めたり、何が“いい”もので何が“悪い”ものかというのを集団内が感覚的に捉えたりすることができる点でいいことだと思います。しかしメリットにもなる一方で、その集団内のみが是だと捉え、他の集団の人々とコミュニケートしなければ、
多様で異質な情報・知識に触れられる機会が少なくなり、イノベーション的な視点や発想を得ることが困難になるデメリットなどもあります。

そういった意味で、定期的に組織外の人々と研究発表を聞く、話す等の機会があることは、研究を進めていく上で、多様な視点から研究を捉えることができるという点で、非常に価値あることだと考えています。

そうやって自分たちが“絶対”だと思いこまずに、他者と比べて自分たちの研究を進めていくことは大切だと思います。

今回の記事はインゼミから個人的に感じたことを綴ったものになってしまいました。
次回の記事からは再び研究内容について触れていきたいと思います。